Witch Girl Pro

Witch Girl S

Witch Girlシリーズレビュー

野村ケンジ
text by オーディオライター 野村ケンジ

 この頃は、イヤモニ(イヤーモニター)タイプの高級カナル型イヤホンに人気が集まっていて、老舗のカスタムIEMメーカーばかりでなく、大小様々なオーディオブランドから幾つもの製品がリリースされていたりする。そんな、大いに賑わっているユニバーサルタイプ・イヤモニのジャンルに新たなるブランドが登場。それがAROMA(アロマ)の「Witch Girl」シリーズだ。

 AROMA(アロマ)といえば、香港に本拠を構えるポータブルオーディオブランドで、先に日本国内デビューしたアナログポタアン(ポータブルヘッドホンアンプ)「A10」のイメージが強い。独自の昇圧回路設計により、ポータブル機器でありながら据置きなみの±15V駆動を実現。別売の交換用オペアンプ「OpaKit」を使用することでデュアルモノ駆動にも対応するなど、徹底的に音質にこだわった内容となっているのが特徴だ。そんな、音質に対して強いこだわりを持つAROMAが、第2弾の製品として、なんと「Witch Girl」シリーズなるイヤモニを作り上げたのだという。しかも、今回「Witch Girl Pro」と「Witch Girl S」という、2モデルを同時リリースするというのだから驚く。

 このように、2モデルがリリースされた「Witch Girl」シリーズだが、実際に製品の詳細をチェックしていくと、この2つは上下関係をもつ姉妹モデルというより、キャラクターが異なる2バリエーションが同時にデビューしたというイメージが強い。というのも、「Witch Girl Pro」は低域にダイナミック型を2基、中域と高域にBA型を2基ずつ搭載する3ウェイ6ドライバー構成のハイブリッドモデルであるのに対して、「Witch Girl S」は低域&中域が2基、高域が1基のオールBA型による3ウェイ5ドライバー構成を採用している。モデル名の付け方も含め、異なるサウンドキャラクターに仕上げられている印象が感じられるのだ。そのなかでも注目なのは、やはり「Witch Girl Pro」のほうだろう。こちら、低域用に8mm口径のダイナミックドライバーを2基も搭載しているのにもかかわらず、筐体サイズは「Witch Girl S」と変わらず。巧みなパッケージングに纏め上げられているのだ。

 いっぽうで、筐体自身のフィニッシュの良さも特筆もの。イヤモニらしいデザインを採用する「Witch Girl」シリーズだが、シェルパーツがひとつひとつハンドメイドされているという丁寧な造り込みのおかげもあってか、ユニバーサルタイプながらもカスタムIEMに近いのでは!?と思わせる良好なフィット感を誇る。同時に、シェルとフェースプレートの境目が分からないほどに仕上げも美しい。外観からも、高級モデルならではの上質感が充分に伝わってくるのだ。
 ちなみに、ケーブルは着脱式を採用。コネクトはイヤモニで一般的な2pinタイプを採用するため、市販のリケーブルを活用して自分好みのサウンドに仕立て上げることもできる。

 とはいえ、いちばん重要なのはそのサウンドだろう。ということで、まずは「Witch Girl Pro」から試聴を始めた。いやはや、なんて面白い製品だろう。外観のイヤモニ然としたデザインからは想像できない、バランスが良く、コントロールの効いたジェントルな音色傾向を持ち合わせているのだ。どちらかというと、高級ヘッドホンに近いサウンドキャラクターというべきか、フラット&ワイドな帯域特性を基本としつつも、ほんの少しだけ低域の存在感を強めに主張させることで、腰の据わった、ピラミッド型の帯域バランスを実現している。たとえば溝口肇のチェロを聴くと、落ち着いた音色の、響きの心地よい演奏を堪能できるし、上原ひろみのピアノは、打音がいつもよりしっとりとしつつ、同時に響きの伸びやかさも感じられる。女性ヴォーカルとの相性も良好だ。花澤香菜を聴くと、彼女ならではの特徴的な声がストレートに楽しめるだけでなく、歌い方のニュアンスまでしっかりと伝わってくる、リアルな歌声を楽しむことができるのだ。また、空間表現についても特徴的といえる。TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDが自らリミックスを手がけた「BEAUTIFUL=SENTENCE(IS IT A BEAUTIFUL WORLD )」は、空間表現にも徹底的なこだわりを見せる楽曲だが、こちらを聴くと、原由実、内田彩という2人のヴォーカルや、シンセサイザーなどのメイン楽器は近い距離感で強い存在感を示すものの、空間表現に確かな奥行き感があり、声の付帯音、アンビエントが自然に広がってく様子が心地よく響いている。どちらかというと、オープンエアー型ヘッドホンに近い音場表現かもしれない。揺るぎない定位感と、スケールの大きい自然な音場感を巧みに両立させているのだ。

 ただし、この「Witch Girl Pro」を使いこなす際、注意すべきポイントがひとつある。というのも、“高級ヘッドホン然”としたキャラクターのためか、ヘッドホンアンプとの組み合わせが多少なりシビアな傾向を持ち合わせているのだ。もちろん、スマートフォン直でも音量的には問題ないのだが、それだと「Witch Girl Pro」の実力を十分に発揮できず、低域のフォーカスが甘くなったり、帯域バランスが整いきれない状態になってしまう。駆動力が高く、それでいて細やかなニュアンス表現を持ち合わせているという、良質なヘッドホンアンプ部を求める傾向があるのだ。実際、ハイレゾ対応DAPでもしっかりなりきった感じまではいかず、ポタアンは必須。しかも、純正組み合わせのAROMA「A10」は当然OKとして、iFI Audio「Micro iDSD」など、駆動力の高さに定評ある製品でないと「Witch Girl Pro」の魅力が全開とはなってくれない。とはいえ、ピタリとはまればリアルさと心地よい響きを併せ持つ、上質なサウンドを存分に楽しませてくれるのも確か。リケーブルによっても音色傾向が敏感に変化するため、セッティングを突き詰めて、自分好みのサウンドを作り上げたテイクのも楽しいだろう。

 もうひとつの「Witch Girl S」は、「Witch Girl Pro」ほどの特徴はなく、どちらかというと外観の印象そのもの、イヤモニらしさが感じられるサウンドキャラクターを持ち合わせている。ダイレクト感が高く、キレの良さも良好なため、フレッシュで活気に満ちた音楽が楽しめる。おかげで、ニルヴァーナやレッド・ホット・チリペッパーズなどのハードロック系は、キレの良い、グルーブ感満点の演奏が楽しめる。いっぽう、ポップス系との相性が良いのも「Witch Girl S」ならではのアドバンテージで、たとえばアニソン、「BEAUTIFUL=SENTENCE(IS IT A BEAUTIFUL WORLD )」を聴くと、原由実と内田彩、それぞれの声の特徴が際立ってくれるし、このふたりの異常なほどの滑舌の良さ、声に乗るエネルギー感の高さが、いつもにまして強く印象づけられる。男性ヴォーカルとの相性もなかなか。たとえばOLDCODEXを聴くと、全身を使って声を出しているTa_2が、さらに勢いよく、さらに刹那的に感じられるから不思議だ。これは、キレの良さと帯域バランスの良好さが両立した製品ならではの特徴といえる。おかげで、中域が変にダフつくようなことはなく、見通しが良く、のびのびとしたヴォーカルが楽しめるのだ。いっぽう、空間表現に関しては「Witch Girl Pro」ほどの奥行き感はないものの、左右いっぱいまで活用する、大きめのサウンドフィールドを持ち合わせているのでけっして遜色はない。こちらもこちらで、既存製品とはひと味もふた味も違う、魅力的なサウンドといえるだろう。

 このように、「Witch Girl Pro」と「Witch Girl S」は、どちらも高級イヤモニならではの音質的な良質さを確保しつつ、同時にそれぞれが個性あるサウンドキャラクターを作り上げていることが最大の魅力といっていいだろう。どちらのサウンドも魅力的だし、どちらの表現にも頷けるところがあるから面白い。是非とも皆さんもじっくり試聴して、自分にとってベストなのはどちらの製品か、好みの音はどちらかを吟味して欲しい。

Witch Girl Proの仕様
ドライバーユニット構成 高域:2バランスドアマチュア型ドライバーユニット
中域:2バランスドアマチュア型ドライバーユニット
低域:2ダイナミック型ドライバーユニット(口径8㎜)
感度 118dB/mW
インピーダンス 16Ω
周波数特性 20-20kHz
付属ケーブル OCC 1.2m 3.5mmステレオプラグ
リケーブル対応(2pin)
市場想定価格 125,000円(税別)
Witch Girl Sの仕様
ドライバーユニット構成 高域:1バランスドアマチュア型ドライバーユニット
中域:2バランスドアマチュア型ドライバーユニット
低域:2バランスドアマチュア型ドライバーユニット
感度 122dB/mW
インピーダンス 48Ω
周波数特性 20-20kHz
付属ケーブル OCC 1.2m 3.5mmステレオプラグ
リケーブル対応(2pin)
市場想定価格 92,000円(税別)

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